文化住宅の売却ガイド
文化住宅の立ち退きと立退料の基礎知識

「建物が古いから」「売りたいから」と退去をお願いしても、入居者の方には住み続ける権利があります。立ち退きは法律の手続きと、相手の生活に関わる話し合いが必要な、時間のかかるものです。このページでは、オーナー様が最低限知っておきたい法律の基本と、立ち退きをせずに売るという選択肢を説明します。法律の個別の判断は弁護士にご相談ください。
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最終更新日:2026年10月10日
まず結論から
- 古い・売りたいだけでは退去を求められません貸主からの解約には、借地借家法の「正当事由」が必要です。
- 立退料に決まった相場はありません引越し費用や家賃の差額などを積み上げ、話し合いで決まります。
- 交渉はご本人か弁護士が行います不動産会社が報酬を得て代わりに交渉することは、弁護士法72条にふれるおそれがあります。
借家人は法律で手厚く守られている
文化住宅の多くは、期間を定めた普通の賃貸借契約か、期間の定めのない契約で貸されています。建物の賃貸借には借地借家法が適用され、貸主から契約を終わらせるには厳しい条件があります。
期間の定めがある契約では、期間が終わる1年前から6か月前までの間に「更新しない」と通知しないと、従前と同じ条件(ただし期間の定めのない契約)で更新されたものとみなされます(借地借家法26条)。期間の定めがない契約では、貸主が解約を申し入れてから6か月がたつと契約が終わります(同27条)。
しかし、どちらの場合も、貸主からの通知や解約の申入れには「正当事由」が必要です(同28条)。正当事由がなければ、通知をしても契約は終わりません。
契約書に「定期建物賃貸借」と書かれ、更新がないことを書面で説明している契約(定期借家)なら、期間の満了で契約が終わります。ただし昭和の文化住宅でこの形の契約はまれで、ほとんどは普通の賃貸借です。
正当事由はどう判断されるか

借地借家法28条は、正当事由の有無を次の事情を総合して判断するとしています。
- 貸主と借主のそれぞれが、その建物を使う必要がある事情
- 賃貸借に関するこれまでの経過(家賃の支払い状況、契約の経緯など)
- 建物の利用状況
- 建物の現況(老朽化の程度、耐震性など)
- 貸主が立ち退きと引き換えに財産上の給付(立退料)を申し出たこと
中心になるのは、双方がその建物を使う必要性です。入居者の方が長年住み、ほかに住む場所の当てがない場合、その必要性は強く評価されます。
「建物が古い」ことだけで正当事由が認められるわけではありません。倒壊の危険が具体的に示されるほど傷んでいる場合は認められやすい傾向がありますが、修繕で対応できる程度なら、それだけでは足りないとされることが多いです。「売却したいから」という理由も、それだけでは原則として正当事由になりません。
立退料は、足りない正当事由を補う要素として考えられます。立退料を払えば必ず退去してもらえる、というものではありません。
入居者付きのまま、無料で査定します
文化住宅を、入居者の方がお住まいのまま査定します。立ち退きを済ませてからでなくて大丈夫です。
受付 10:00〜19:00(水・日定休)。当社は立ち退きの交渉を代理しません。入居者の方とのお約束は、そのまま買主が引き継ぎます。
立退料に「相場」はない
「立退料は家賃の6か月分が相場」といった説明を見かけますが、これは正確ではありません。立退料は法律で計算方法が決まっているものではなく、個別の事情に応じて話し合い(まとまらなければ裁判)で決まります。
考え方としては、次のような費用を積み上げることが多いとされています。
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 引越しの費用 | 運送費、荷造り、エアコンなどの移設 |
| 新しい住まいの契約費用 | 敷金・礼金、仲介手数料、保証会社の費用など |
| 家賃の差額 | 今より高くなる家賃の差額の一定期間分 |
| その他 | 店舗なら営業ができなくなる損失、高齢の方の住み替えの負担への配慮など |
文化住宅は家賃が月3〜5万円と安いことが多く、同じ条件の部屋がほかに見つかりにくいため、家賃の差額が大きくなりがちです。入居者が高齢の場合は、保証人がいない、新しい部屋の審査が通りにくいといった事情もあり、話し合いが長引く原因になります。
入居者の側から「公共事業のときしか立退料はもらえない」と業者に言われた、という相談も見られますが、これも誤りです。貸主の都合で退去をお願いする以上、立退料の申し出は正当事由を補う大切な要素になります。
交渉は誰がするのか ― 非弁行為に注意
立ち退きの話し合いは、オーナー様ご本人が行うか、弁護士に依頼するのが基本です。弁護士でない者が、報酬を得る目的で他人の法律事件について交渉や代理をすることは、弁護士法72条で禁じられています(いわゆる非弁行為)。
不動産会社や管理会社が「立ち退き交渉も代わりにやります」と申し出ることがありますが、報酬を得てオーナー様の代わりに入居者と退去の条件を交渉することは、この規定にふれるおそれがあります。トラブルになると、合意そのものの有効性が争われることもあります。
当社は宅地建物取引業者であり、弁護士ではありません。入居者の方との立ち退きの交渉を、売主様の代わりに行うことはしません(報酬を得て他人の法律事務を扱うことは弁護士法72条で禁止されています)。法的な判断が必要な場合は弁護士にご相談ください。
話し合いで退去が決まったら、退去日、立退料の額と支払時期、敷金の扱い、残した荷物の扱いを書面(合意書)にします。書面の内容は弁護士に確認してもらうと安心です。
レントロール(家賃の一覧)がなくても大丈夫
部屋ごとの家賃や敷金がわからなくても構いません。通帳の入金記録や手元の契約書から一緒に整理します。
受付 10:00〜19:00(水・日定休)。当社は立ち退きの交渉を代理しません。入居者の方とのお約束は、そのまま買主が引き継ぎます。
退去が決まった後の手続き

話し合いで退去が決まった場合は、退去日に鍵を受け取り、部屋の状態を一緒に確認します。敷金は、合意書で決めた方法で精算します。原状回復の範囲は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が参考になり、通常の使用による傷みや経年劣化は、原則として借主の負担になりません。
残された荷物は、所有権が借主にあるため、合意書で「残置物の所有権を放棄し、貸主が処分してよい」と定めておかないと、勝手に処分できません。退去後の部屋を新たに貸すかどうかも、売却の予定とあわせて考えてください。
立ち退きをせずに、入居者付きのまま売る
立ち退きは、費用だけでなく「いつ終わるかわからない」ことが大きな負担です。その間も固定資産税や修繕費はかかり続け、ご高齢のオーナー様にとっては心身の負担にもなります。
入居者付きのまま売る場合、立ち退きにかかる時間・費用・不確実さは買主が引き受けます。その分、価格は「全室空室で更地にできる状態」より低くなりますが、オーナー様は話し合いをしないまま、決まった日に代金を受け取れます。
どちらが手元に多く残るかは、入居者の人数、契約の内容、建物の状態によって違います。当社では両方の場合の考え方を並べてご説明します。
当社はUR賃貸住宅の取扱店です。入居者の方が住み替え先を探す場合に、UR賃貸住宅の探し方や相談先をご案内することはできます(入居者の方との交渉や、退去の代理を行うものではありません)。
築55年・6戸のうち2戸に高齢の方が入居
相続した文化住宅で、残る2戸の入居者はともに80代。退去をお願いする気持ちにはなれないが、建物の傷みと固定資産税が心配、というご相談です。こうした場合、入居者付きのまま買い取り、賃貸借をそのまま引き継ぐ形をご提案しています。
エリア別のデータで相場を確かめる
当サイトでは、府内67エリアごとに、木造の共同住宅(築1985年以前)の取引価格、賃貸用の空き家、駅の乗降客数などをまとめています。取引の多いエリアは次のとおりです。
東大阪市(72件)堺市堺区(64件)寝屋川市(58件)大阪市西成区(54件)豊中市(48件)門真市(45件)守口市(36件)大阪市東住吉区(32件)大阪市住吉区(30件)枚方市(28件)堺市西区(25件)大阪市平野区(22件)
よくあるご質問
老朽化が進んでいれば、退去してもらえますか?
立退料はいくら払えばいいですか?
不動産会社に立ち退き交渉を任せてもいいですか?
入居者に「売るので出て行ってほしい」と言ってもいいですか?
このページの監修

シュース健人宅地建物取引士
宅地建物取引士 大阪府 第118737号/株式会社GEEZ 所属
株式会社GEEZ所属。大阪・関西の相続、空き家、再建築不可、借地、工場・倉庫、長屋・文化住宅といった売却の難しい不動産の相談を担当しています。
本ページの数値は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」、総務省「住宅・土地統計調査」、経済産業省「工業統計調査」、国土地理院、OpenStreetMap の公開データを当社が集計したものです。価格は物件ごとの事情で変わります。実際の金額は現地確認のうえでご提示します。